どうする遺伝性卵巣がん診療
今日、勤務先の婦人科Drから電話で相談を受けました。
4月から遺伝性乳がん卵巣がんの診療が保険収載されることに伴い、婦人科での診療の流れをどう組み立てるか?ということでした。
私はすぐに意見をまとめられませんでした。
なぜなら、乳腺外科での「これまでの遺伝性乳がん診療の流れをどう変えるか?」という問題を考えるだけで最近は精一杯だったからです。
私が勤務する病院の婦人科では、遺伝性卵巣がんを念頭においた診療は行われていません。
PARP阻害剤が使えるかを判定するためにBRCA1/2遺伝子検査を実施することはあります。
しかし、あくまで治療の一環としてであり、「遺伝性卵巣がん」を診断するためのBRCA遺伝子検査は行ったことがありません。
そのため、勤務先の婦人科で遺伝性卵巣がんの診療を行うには、診療の流れを一から組み立てる必要があります。
これが乳腺外科と大きく異なる点です。
乳腺外科では「今までの流れをどう変えるか?」で済みますが、婦人科ではゼロから考えなければなりません。
乳腺外科のフローを当てはめれば済みそうに思えますが、実際はそう簡単ではないのです。
乳がんと卵巣がんの診断の流れが違ったり、医療スタッフの遺伝に関する知識量が違ったりするためです。
婦人科Drにとっても、遺伝カウンセラーの私にとっても正直難しい課題です。
今の時点でぱっと思いつく、検討すべきポイントを記してみます。
【BRCA遺伝子検査の対象について】
卵巣がん患者さんのうち、どのような特徴があれば「遺伝性を疑う卵巣癌」とレセプト審査で認められるのか?
がんの家族歴の情報は必要なのか、それとも発症年齢もしくは組織型だけでもよいのでしょうか。
それによって、誰にどのくらい詳しく家族歴を確認するのかが変わってきます。
【新しい診療を始めるにあたって】
遺伝性が疑われる場合、患者さんにいつ、どのようにお話しするのがよいか?
乳がん患者さんの中では「遺伝」に関心がある方が増えている印象がありますが、
卵巣がん患者さんにとってはどうでしょうか。
医療者っても患者さんにとっても経験が少ない領域ですので、手探りで進めていく必要があります。
忙しい外来の数分の説明だけで十分でしょうか?コメディカルはどのような助けができるでしょう。
医師だけでなくコメディカルも持っておきたい知識は何でしょう。
ついでに子宮内膜がん患者さんに対するLynch症候群スクリーニングの流れも作れないでしょうか?・・・と、
次つぎ検討課題が出てきます。
うーん、大変だ・・・(^^;)
初めから完璧な対応は難しいかもしれませんが、
婦人科Dr,看護師の皆さんと試行錯誤しながら新しい診療を進めていけたらと思います。
今日も読んでいただきありがとうございました。
井令 咲絵(いれさき)