理学部生、遺伝カウンセラーになる

"遺伝"と触れ合いながら生きていく、試行錯誤の記録。twitter @sakie_irayで最新情報を発信中。

企業での遺伝カウンセラーの仕事って?

先日、ブログのコメント欄に質問をいただきました。

こんにちは。いつも拝見しています。同じく理学部から遺伝カウンセラーを目指している者です。現在四年生で院試の勉強に追われています。
Twitterも拝見しており、病院での働き方についてのツイートも読ませていただきました。
なかなか待遇について対面で聞ける相手がおらず困っていたのでとてもありがたかったです。
病院での仕事は魅力的な反面、昇給システムなしといった条件でずっと働き続けるのは大変だなぁ...と感じてしまいました。
いれいさんは、企業への就職という選択肢を検討したことはありましたか?もしあればどんな業界/職種だったか、それでも病院を選んだ理由などを聞かせていただければ幸いです。 

 

コメントありがとうございます!!

院試勉強お疲れさまです!🍺(←院試が終わったら乾杯しましょうね!

 

いただいた質問の内容は、

きっと他の遺伝カウンセラーを目指す人も気になっていると思いますので、

1記事として返事をまとめます✏️

 

 

1、どういう企業に遺伝カウンセラーがいるの?

主に、検査会社と製薬企業です。

私も全て知っているわけではないですが、

web上で遺伝カウンセラーが在籍している情報を公開している企業を集めてみました。

 

検査会社

【web上で遺伝カウンセラーが在籍している情報を公開している企業】

●GeneTech株式会社

https://www.genetech.co.jp/concerned/support/

医療者からの問合せに遺伝カウンセラーの方が対応されているようです。

 

 

●ラボコープ・ジャパン合同会社

http://www.labcorp.co.jp/medical/mutseq.html

こちらも医療者からの問合せ対応を担当されています。

リンク先に「検査についてご不明な点は、弊社 遺伝カウンセラーへお問い合わせください」とあります。

 

【いれさきが推測した企業】

●株式会社ファルコバイオシステムズ

岡山大学病院の遺伝カウンセラーさんのご経歴にあったので載せましたが、

今も遺伝カウンセラーが在籍しているのかは分かりません。

https://cgm-okayama-u.jp/staff/%E6%B5%A6%E5%B7%9D%E5%84%AA%E4%BD%9C/

 

コニカミノルタプレシジョンメディシンジャパン株式会社

 http://magicalir.net/slideshow/4902/2017-07-06

買収したアメリカのAmbry Genetics社に遺伝カウンセラーがたくさんいるのと、

上記リンクのスライド23枚目に「遺伝カウンセラーコミュニティの拡充」とありますので、

日本でも遺伝カウンセラーの雇用を増やしていくのではないかと、勝手に予想。

 

製薬会社

【web上で遺伝カウンセラーが在籍している情報を公開している企業】

アミカス・セラピューティクス株式会社

 https://mainichi.jp/articles/20191031/ddm/013/040/009000c

 

【いれさきが推測した企業】

●サノフィ株式会社

2013年の遺伝カウンセリング学会で、日本の遺伝カウンセラーの方が講演されていました(当時はGenzyme)。今も遺伝カウンセラーが在籍しているのかは分かりません。

 

2、企業で遺伝カウンセラーは何をしているの?

末尾の資料を参考に、ざっとまとめてみました。

 

【顧客(医療者)との調整役】

f:id:sakie_iray:20200621200259p:plain

・遺伝子検査に関する情報を提供

・検体に問題が生じた時への顧客への通知と海外ラボとの調整

・顧客の要望に応じて、自社で実施できない検査を調べて情報提供

 

【教育】

f:id:sakie_iray:20200621200404p:plain

・顧客に、ベストな遺伝子検査や追加検査について説明

・顧客を対象とした学術セミナーの企画、講演

(製薬会社であれば、疾患啓発や遺伝カウンセリング啓発)

・社内スタッフへの研修

 

マーケティング

f:id:sakie_iray:20200621200506p:plain


・顧客の要望から、次の商品を企画開発する

・一般向け、顧客向けのパンフレットやマーケティング資材の企画、作成、情報更新

・学会などの営業と同行し、営業担当者の技術サポートを行う

・会社のホームページの更新・管理

 

参照情報

  • 仲間美奈,他:「認定遺伝カウンセラー(R)の雇用に対する検査会社の視点」日本遺伝カウンセリング学会誌 40(3): 85-93, 2019
  • 白山大揮,他:「日本における企業勤務認定遺伝カウンセラーの役割とその重要性」日本遺伝カウンセリング学会誌 39(3): 103-107, 2018
  • 酒井規夫:「米国製薬企業での遺伝カウンセラーの状況」日本遺伝カウンセリング学会誌,34:36,2013

 

3、企業勤務の給与はどれくらい?

統計データは見たことがないですが、

ネットで見つけた「外資系製薬メーカーの遺伝カウンセラー」の求人は、

年収600 ~ 1300万円とありました。

∑(゚Д゚)

https://bit.ly/2CmP2RX

 

 

病院勤務で年収600万円いく人はそういないでしょう。

まず大学病院の常勤で、良くて年収350万円くらいです。

他に、掛け持ちでウン十万円くらいアップできたとしても、

600万円は・・・なかなか難しいですね。

 

求められるスキルもより高いのだと推察します。

 

(ヨシ、明日からビジネス英語勉強しよ。

(^ω^)

 

 

4、なぜ、いれさきは病院勤務を選んだのか?

私も、卒後は病院で働くのか、企業に就職するのか悩みました。

私は社会人経験を経ずに遺伝カウンセラーの大学院に進学したので、

「一般常識を企業で身に付けた方がいいのかも」と思うこともありました。

 

実際に、遺伝カウンセラーの先輩にも同じような考えから新卒で企業に就職した何人かいましたし、立派に活躍されていたので、企業勤務もすごく魅力的でした。

 

一方、病院勤務はというと、

昇給システムはない、有期雇用ばかり、施設によって働き方の良し悪しがバラバラ・・・と不安要素だらけ。

ましてや「働く」という実感がなかった私にとって、どこが「よい条件の求人」なのかさっぱり分からず。

 

ただ、はっきりと自覚した考えもありました。

それは、

「現場で、患者さんや働く人の悩みを肌で感じてみたい」

「いま医薬系企業に行っても、現場のことを知らないのに貢献できる気がしない」

というものでした。

 

現場で働いてそれなりになりますが、ありがたいことに、

首を切られることもなく、

いろいろな病院で雇ってもらい、

何よりも患者さんや現場の医療者からたっっっくさんの人生の苦楽を学ばせていただき、

病院勤務を選んだことに後悔はありません。

当初の目的の「現場で、患者さんや働く人の悩みを肌で感じてみたい」はちゃんと達成できています。

 

ちなみに他の遺伝カウンセラーさんで、

卒後すぐ企業に就職→数年後に病院へ転職

というキャリアを歩んでこられた方が何人かいらっしゃるので、

まず企業にいってみるという方法も結構ありなのだと思います。

その逆のパターンは、数名しか聞いたことがないですが、今後増えていくと予想しています。

 

 

私は、これから病院勤めを続けるのか、企業勤めへ転向するのかは分かりません。

 企業しかできない全国の医療者へアプローチ力を使って、

現場で感じてきた問題を解決する仕事もきっとおもしろいでしょう。

 

ま、人生まだまだ長いですし、その時やりたいことをやるのみです。

 

この業界は、自分が動ける時と求人が出るタイミングが合うかどうかに依るところも大きいので、

もし一度就職したところでつまづいても、何年か踏ん張って待ち続ければ、

病院や企業に関わらず、よい就職先にいけるのだと思っています!

( ´∀`)☆

 

 

5、まとめ

理学部4年生さん、参考になりましたでしょうか?

 

遺伝カウンセラーと一言で言っても、

それぞれ強みも、仕事に求めるものも違いますので、

自分がやりたいことを実現できる職場に行けるといいですね!

 

そして、

もし企業に勤めている遺伝カウンセラーの方で、

このブログを見た方がいたら、

遺伝カウンセラーのお仕事紹介のwebページをつくってください!

(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

若い学生に希望を持ってもらえるようなカッコいいやつ、いっちょお願いします!

 

 

今日も読んでいただきありがとうございました。

応援していただける方は、⭐️または読者登録いただけると嬉しいです(^^)

 

井令 咲絵(いれさき)