がんゲノム検査の二次的所見の指針改訂版について
今日は先週公開された、
「がん遺伝子パネル検査二次的所見患者開示ミニマムリスト暫定案 ver.2」と、
「ゲノム医療における情報伝達プロセスに関する提言―その1:がん遺伝子パネル検査を中心に(改訂版)」
の2つの資料について、
印象に残った点を書きます。
患者さんへの開示ミニマムリストver.2
https://www.amed.go.jp/content/000045428.pdf
前回よりさらに具体的で明解な内容になっています。
1、前回のミニマムリストの遺伝子が「最も強く開示を推奨」に位置づけられ、
さらに、がんゲノムプロファイリング検査に含まれる他の遺伝性疾患の遺伝子すべてについても、
新たに3段階で評価が付けられています。
2、腫瘍組織のみのゲノムプロファイリング検査で二次的所見疑いの変異が検出された際に、
確定検査が必要かどうかについても、新しく3段階で推奨度が示されています。
これだけ多くの遺伝子について、「患者さんへの開示の推奨度」を吟味し、コンセンサスを形成するプロセスは相当大変な作業だったと拝察します。脱帽です。
私のような、
「この遺伝子の病的変異だったら、総合的に考えて開示しなくてもいいだろう。あのセミナーでも勉強したしね。でもでも、こう考えるのは自分だけかもしれない。もごもご・・・。」
という感じ弱気な遺伝カウンセラーの背中を押してくれる資料です。
ということはおいといて、
まじめに、
患者さんがどのがんゲノム医療病院でも、二次的所見の開示や確定検査について、
統一した対応を受けられるようになるわけですから画期的なことです。
あとはどの遺伝性腫瘍でも、地域ごとの拠点病院であれば一定の診療が受けられるように、
私たち遺伝の専門職は努力していかなければと思います。
がんゲノム検査の情報伝達プロセスの提言 改訂版
https://www.amed.go.jp/content/000045427.pdf
1、二次的所見疑いの遺伝子変異について、確定検査を行うかどうかの判断のフローチャートが新たに示されました。
特に、バリアントアレル頻度の目安の数字があるのがありがたいです。
続いてlipuid Biopsyのバージョンも・・・お願いしたいです。
腫瘍組織のみのゲノムプロファイリング検査と同様に考えてよいか、はたまた、lipuidの場合に注意すべき点は何か、
勉強せねば。_φ( ̄ー ̄ )
2、初版に引き続いて「二次的所見の遺伝カウンセリングは自費診療のため費用負担が小さくなるように工夫が必要」という旨の記載がありましたが、
先日の中医協の診療報酬改定の資料によると、保険適応になるようです。
もう問題解決されている。すごいです。
ちなみに「遺伝カウンセリング加算」ではなく、
「遺伝性腫瘍カウンセリング加算」という新設の項目で、
何点になるかはこれから決まります。
施設要件は、がんゲノム中核拠点・中核・連携病院であれば算定可、のようです。
ひとこと
このありがたい資料を携えて、日々のエキスパートパネル、患者さんへの遺伝カウンセリングに臨みたいと思います。
そう思うと、この資料はその出発点にすぎないということに気づかされます。
遺伝カウンセラーの仕事は、患者さんご家族の目線をもって準備し、その場に臨むこと。
この分野が進んでいる諸外国での、そのような目線の論文もチェックしたり、自分が経験したことを学会で共有したり、
いち遺伝カウンセラーとしてできることをしていきたいと思いました。
ただの感想文でしたが、
今日も読んでいただきありがとうございました。
井令 咲絵