COVID-19の感染対策と遠隔遺伝カウンセリング
COVID-19の影響で、勤務先の遺伝カウンセリング外来も対応を求められています。
遺伝カウンセラーどうし、こういう時こそ助け合っていけたらいいなと思うのですが、プラットフォームがないのでなかなか難しいですね。
同じように困っている遺伝カウンセラーの参考になれば幸いです。
遺伝カウンセリング外来での感染対策
- 緊急でない内容の遺伝カウンセリングは全て延期
- 来院のマスク装用と手洗いのお願い
- 遺伝カウンセリング前後の共用部分(ドアノブや机、椅子や備品)の消毒
- 同席できる家族の人数を1名に制限。医療者も最低人数で。
- 遺伝カウンセリング中の換気のために窓や扉を開ける
- 来談者と遺伝カウンセラーは机の端どうしに座る
- 遺伝カウンセラーもマスとアイシールド装着
という対応を今週から始めました。
特に今までと違って困った点
緊急でない内容の遺伝カウンセリングは全て延期
・出生前検査の遺伝カウンセリング
・乳がんの術式決定のためのBRCA検査の遺伝カウンセリング
上記2つの内容以外は基本的に延期をお願いしています。
とりあえず半年後に予約を延期して、その時にまた状況をみて判断する方針にしました。今のところ皆さん快くOKしていただいています。
同席できる家族の人数を1名に制限
遺伝カウンセリングでは、家族に一緒に聞いてもらってこそ意味があるセッションも多いです。それを制限することになるのは心苦しいですが、3密防止のためには致し方ないと考えています。
今までもそうでしたが、遺伝カウンセリング終了時に、家族と帰ってから情報を共有できるように資料をお渡ししています。
遺伝カウンセリング中の換気
これもプライバシーを大切にする遺伝カウンセリングでは、できるだけ避けたいものです。
しかし3密対策のために、空気の通り道を必ず確保しています。
窓がない部屋では空調や空気清浄機の送風を「強」にし、扉を少し開けています。
来談者と遺伝カウンセラーは机の端どうしに座る
診察室のような配置の場合は難しいですが、楕円型のテーブルがある遺伝カウンセリング室では、人と人との距離をできるだけとるようにしています。
使う資料は、人数分コピーし、離れていても全員が同じ資料を見れるように工夫しています。
今度プロジェクターを使ってようかとも思案中です。
所感
来談者も遺伝カウンセラーもマスクを着けているため、互いの表情が分かりづらく、さらに物理的距離も離れていて、とてもやりづらいです。
さらにアイシールドまで付けたら患者さんとの「壁」がまた増えてしまいます。仕方ないですが、いつまでこの感じが続くのか・・・(T.T)
今まで普通にできていたことがいかに有難いことだったか、痛感しています。
病院感染対策部門からは「患者さんとの接触時間はできるだけ短く済ますように」との指導もあり、本来は遺伝カウンセリングでもテキパキ進めないといけないのかもしれません。
でも、それだともはや「遺伝カウンセリング」ではなくなってしまうので、時間はあまり気にしないようにしています。対話のスピードはいつも通りです。
このように、感染リスクを下げる工夫は色々していますが、
本来は「病院に来ること自体がリスク」ですので、遠隔で遺伝カウンセリングができるのが一番です。検査の日にだけ来院してもらえたら十分です。
遺伝カウンセラーだって、COVID-19の診療には直接かかわることはできない職種ですので、テレワークができるなら在宅勤務にした方が社会的も望ましいでしょう。
アメリカでは様々な遠隔遺伝カウンセリングのサービスがあるようです。
この会社の、COVID-19蔓延下での遠隔遺伝カウンセリングの説明は、読んだらすごく勉強になりました。
他に遠隔遺伝カウンセリングを提供している会社は、
ここと、
ここと、
ここと、
ここと、
www.insightmedicalgenetics.com
ここと、
こちらは電話の遺伝カウンセリングですね。
https://www.invitae.com/en/individuals/genetic-counseling/
って、調べたらどんどん出てくるんですけど!笑
うらやましい!
アメリカはweb上で電子カルテ閲覧が可能とのことで、オンライン診療がしやすいんですね。
会社によっては、ZOOMで遺伝カウンセリングしているところもあり、私でもできそうな気がしてしまいます。
日本ではどうでしょうか。
遠隔での遺伝の相談を受けているのは、私が探した限り、がん研有明病院しか見つかりませんでした。
このような遠隔診療の支援ソフトはいくつかあるようで、こういうのを病院にお願いして導入してもらえばいいんでしょうか。
普段、私も含めて遺伝カウンセラーは「多様性が大切」と言っているのに、遺伝カウンセリングの形の多様性に欠けていたせいで、いざという時に困ってしまい。
情けない限りです。
変化に適応するには多様性が大切。
遺伝カウンセリングは病院でなくても、昼間でなくても、対面じゃなくても、通話でなくても、工夫すればできるはず。
さまざまな形の遺伝カウンセリングを模索していきたいと思います。
今日も読んでいただきありがとうございました。
井令 咲絵(いれさき)