認定遺伝カウンセラーとは
昨年の日本人類遺伝学会で、
遺伝カウンセラーの職能団体である日本認定遺伝カウンセラー協会の総会があり、
そこで2020年に協会設立10周年記念イベントを行う方針が示されました。
具体的な日時や場所は協会が公開してから載せようと思いますが、
いち遺伝カウンセラーとしてはとても楽しみにしています。
遺伝カウンセラーとは何をする人で、
今後の医療や社会にどう貢献していくことができるのか?
そんな内容が示される会になるといいなと思います。
と、他人事すぎるのもどうかと思い、
「遺伝カウンセラーって何?」を振り返るべく、
下記の、遺伝カウンセラー制度が開始した時の資料を見てみました。
自分の役割や目標を再確認できたの同時に、
もっとこの内容を広く社会に知ってもらいたいと改めて思いましたね。
やっぱりこの仕事が好きだから。
http://plaza.umin.ac.jp/~GC/About.html
認定遺伝カウンセラーとは
1)認定遺伝カウンセラー®は遺伝医療を必要としている患者や家族に適切な遺伝情報や社会の支援体勢等を含むさまざまな情報提供を行い、心理的、社会的サポ-トを通して当事者の自律的な意思決定を支援する保健医療・専門職である。
2)認定遺伝カウンセラー®は医療技術を提供したり、研究を行う立場とは一線を画し、独立した立場から患者を援助することが求められる。
3)認定遺伝カウンセラー®は、遺伝カウンセリングについて一定の実地修練を積んだ後に資格認定される専門職で、下記の要件を満たす必要がある。
・最新の遺伝医学の知識を持つ
・専門的なカウンセリング技術を身につけている
・倫理的・法的・社会的課題(Ethical-legal-social issues: ELSI)に対応できる
・主治医や他の診療部門との協力関係(チーム)を構成・維持できる
4)認定遺伝カウンセラーとなりうる基盤の職種としては看護師、保健師、助産師などのメディカルスタッフや、臨床心理士、社会福祉士、薬剤師、 栄養士、臨床検査技師などのコメディカル・スタッフ、また生物学・生化学などの遺伝医学研究者やその他の人文・社会福祉系などの専門職が考えられる。
(厚生労働科研報告書:認定遺伝カウンセラー制度研究の歩みより作成)
認定遺伝カウンセラーの養成カリキュラム
認定遺伝カウンセラー®の養成にあたる基本的な目標は下記のとおりである。到達目標については、それぞれの目標レベルに応じた履修科目をリストアップし、その履修目標をまとめている。
(1)一般目標(GIO)
遺伝医療の現場において臨床遺伝専門医や他の医療スタッフと協力して相談に訪れたクライエント(来訪者)に臨床的で科学的な情報を提供し、クライエントが遺伝子診断、遺伝子治療を含む医療や生殖行動など日常生活の場において自らの意志によりこれらの情報を有効に活用して自分や家族のQOLを向上できるように援助するために必要な臨床遺伝学、カウンセリングに関する基本的な知識、技術、態度を学ぶ。
(2)到達目標(SBO)
1)知識レベル:
人類遺伝学の基本知識、代表的な疾患の臨床像、自然歴、診断法、治療法に関する基本的知識を持ち、発生予防、医学的管理、社会的資源の活用法などを知っている。遺伝子診断の基礎を理解し、発見された遺伝子異常についてクライエントへの情報提供やカウンセリングをおこなうための基本的知識を修得している。認定遺伝カウンセラー®として活動するためにわが国の医療・福祉システムや制度、倫理および法的背景について必要な知識を修得している。
2)技術レベル:
遺伝医療のニーズにあった家系情報を収集し、家系図にまとめることができる。クライエントが持つ問題の遺伝学的リスクを正しく推定できる。クライエントと好ましい人間関係をつくるためのコミュニケーション技術を持っている。クライエントに共感的理解と受容的態度を示しながら非指示的カウンセリングを行うことができる。クライエントの心理的課題に認定遺伝カウンセラー®の立場から介入でき、家族等周囲との人間関係を調整し、患者や家族のQOLを向上させるための指導技術を持っている。遺伝医学の最新情報、専門医療情報、社会資源情報、患者の支援団体情報を収集し、その情報をクライエント自身が活用できる形で提供したり、臨床遺伝専門医との連絡、専門医療機関や地域行政機関と連絡調整をおこない、クライエントが最良の遺伝医療を受けることができるよう調整する技術を持っている。専門職として常に最新の遺伝医学情報にアクセスしたり、臨床遺伝専門医とのミーティング、研修会への出席、学会活動など自己学習の手段を修得している。
3)態度レベル:
認定遺伝カウンセラー®は遺伝医療を支える医療スタッフの一員であると同時に、医療技術を提供する主治医の立場からではなく、クライエントの側に立って最良の選択を行えるよう援助することが求められていることを自覚し、臨床遺伝専門医、主治医、他の医療・福祉スタッフとの間で好ましい人間関係を作り出すための調整技術と態度を身につけている。また、医療スタッフの一員として、ジュネーブ宣言とヘルシンキ宣言の主旨を遵守したうえ、クライエントの利益に深い配慮をはらいながら活動する態度を身につけている。クライエントに対してはカウンセリング・マインドを基本とし、社会通念や倫理規範にも十分に配慮しながら科学的なカウンセリングを行う態度を修得している。
この貴重な文章を活かすために、
まず、
認定遺伝カウンセラー協会の「認定遺伝カウンセラーとは?」のページにも書いてほしいなと思います。
(このページ)
まず、認定遺伝カウンセラー®とは 1.) 2.) 3.) 4.) を記載して、
その下に具体的にできることとして、
認定遺伝カウンセラーの養成カリキュラムの内容を記載するのはどうでしょうか。
この文章、認定遺伝カウンセラー協会のwebサイトにしかなく、
遺伝カウンセラー制度委員会のwebサイトでしか、しかも、小さな▽ボタンを押さないと出てこないんです。
もったいない・・・。
って、ここで書かずに直接協会にお伝えしなさいって話ですよね。すみません。
あと、今の医療現場の具体的な場面に落とし込んだ例があると良いと思います。
あの緻密な文章を、遺伝カウンセラー以外の人に全部呼んでもらうことは難しいでしょう。
目指す像は分かるのですが、具体的にいつ、どこで、何をしてくれる人なのかは想像しにくいです。
遺伝カウンセラーが自分に何をしてくれる人なのか?
→遺伝カウンセラーに直接会えるまで楽しみにしていてください♪
という状態では、患者さんにとっても、遺伝カウンセラーを雇おうか検討している病院にとっても困りますよね。
私も実際、もしこの内容を入職前に上司(遺伝カウンセリングを見たことがないドクター)に知ってもらえてたら、もっとスムーズに色々なことが運んだだろうなと思ったりします。
遺伝カウンセラーを知らない人にどう伝えるか?
遺伝カウンセラー協会10周年イベントをきっかけに私自身も考えていきたいと思います。
日々、ボランティアで協会の運営を担ってくださっている遺伝カウンセラーの皆様への感謝もこめつつ。
今日も呼んでいただきありがとうございました。
井令 咲絵(いれさき)