論文セミナーをしたい
毎日忙しくすぎていく現場で、
「論文読めてない…」と思いながら早数年。
仕方ないのでセミナーで知識のアップデートはする。
でも自分の頭で考えていない。
他人の意見を頭に書き写すだけ。
元・理学部生としてはあるまじき姿ですね。
「自分の頭で考えて、自分で試したこと以外は信じない」
(以前の研究室のボスの言葉)
こういう姿勢を忘れないようにしたいものです。
理学部の研究室にいた頃は論文セミナーが週1回ありました。
論文セミナーでは、数人が順番に持ち回りで論文を紹介していきます。
発表者は論文を読む力、まとめる力、発表する力がつきます。
参加者は事前に論文を読み質問を考えておくことで、
自分の興味と違う分野であっても知識がつきます。
当日はさまざまな議論が生まれ、
回を重ねるごとに論文の批判的吟味の能力がついていきます。
しかし、遺伝カウンセラーは1人職場のことが多いです。
そのため、遺伝カウンセリングの論文セミナーをしたくても機会がありません。
この現状を何とかできないかなと考えています。
とりあえず1人でも、
- 自分の疑問の解決に近く論文を探す
- 論文の内容を把握する
- 論文の内容を文章で分かりやすくまとめる
という作業を進めていきたいです。
このブログでもその記録を残していけたらと思います。
ただ、医療系の論文はweb上で紹介する時は注意が必要と聞きました。
この辺りのお作法を他のブログで勉強します。
今月中は1報できたらいいな。
そしていつか、1人職場の遺伝カウンセラーどうしで、
web上の論文セミナーを開催できたらいいな。
今日も読んでいただきありがとうございました。
井令 咲絵(いれさき)
遺伝性乳がん診療に携わる遺伝カウンセラーへ
これまで乳癌診療ガイドラインで、
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)診断目的のBRCA遺伝子検査の前には遺伝カウンセリングが必要とされていましたが、
4月の診療報酬改定以降は、外来担当医からの文書による説明でOKということになりそうです。
BRCA遺伝子検査を必要としている患者さんに広く提供できる体制になるのは素晴らしいと思いますが、
実際は医師がこの「説明」にどれくらいの労力をかけられるか気になります。
遺伝カウンセラーが在籍しているような、ある程度の規模の病院であれば、
乳腺外来はかなり忙しい状態だと思います。
今まで遺伝カウンセリング外来にお願いできていたことが外来担当医の仕事として増えていくと、
現場の医師としては「これ以上外来の仕事を増やさないで・・・」と思うのが正直なところではないでしょうか。
遺伝カウンセラーの立場としても、
せっかく任せてもらえる遺伝カウンセラーがいるのに制度改定により活用されにくくなり、たださえパンク状態の外来の医師の仕事が増えていくことは、
なんだか残念な状態だなと思うのです。
先週、乳腺外来の看護師の方とこの件について話をする機会がありました。
「もし外来のBRCA遺伝子検査の説明だけでOKになったら、患者さんはみんな検査を受けると思います。
多くの患者さんは先生から提案された検査は“受けた方がよい検査”と思ってしまうんです。
遺伝カウンセリングは違う立場の専門家と相談してもらえることで、
患者さんが一度立ち止まって考える機会になっています。
それがあるから私たちも安心してHBOC診療を進めていくことができましたが、
看護師の目線からみて“この人大丈夫かな?”と思う人も遺伝子検査をぱっと受けるようになると、
それでいいのかな?という思いもあります」
というお話でした。
今後、一般外来でBRCA遺伝子検査を進めていくのに注意すべき点だなと気づかされました。
現状、遺伝カウンセラーは国家資格ではありませんので、診療報酬を算定できないのは仕方ありません。
でも遺伝カウンセラーは遺伝性乳癌の遺伝カウンセリングを担当できるトレーニングを受けています。
・この方の心配事は遺伝子検査で解決に近くだろうか?
・どの遺伝子検査が適切なのか?
・この方や家族にも最大限のメリットを受けていただけるように、どう方針を立てればよいか?
遺伝カウンセラーは患者さんとともに事前に確認することができます。
実際に検査前の遺伝カウンセリングを遺伝カウンセラーが担当している病院は少しずつ増えています。
費用の問題はありますが、
外来での説明に使ってもらうHBOCの資料を用意する、
個別の患者さんごとに遺伝カウンセラーが説明補助につく、
遺伝カウンセラーが患者さん向けの説明会を開くなど、
どういう形であれどうか専門性を活かしてほしいと思います。
「遺伝カウンセラーは足りないから、いなくてもいいような制度にしよう」
という考えは、遺伝医療の普及を目指す立場から見ればその通りですが、
その声に「そうですね」と私たちが言っていては、
いつになっても遺伝カウンセラーを活用してもらえる制度にはなりません。
制度はなくても、患者さんのためにできることを見つけて、
現場の医療スタッフの役に立っていきましょう。
以上、私の偏った目線による意見でしたが、
それぞれの病院で、HBOC診療にかかわってきた医師、看護師、遺伝カウンセラー、可能であれば患者さんも含めて話し合い、
ベストな方針を決められると良いなと思います。
今後の学会や社会でどのような反響があるか、アンテナを張っていきたいと思います。
今日も読んでいただきありがとうございました。
井令 咲絵(いれさき)
認定遺伝カウンセラーとは
昨年の日本人類遺伝学会で、
遺伝カウンセラーの職能団体である日本認定遺伝カウンセラー協会の総会があり、
そこで2020年に協会設立10周年記念イベントを行う方針が示されました。
具体的な日時や場所は協会が公開してから載せようと思いますが、
いち遺伝カウンセラーとしてはとても楽しみにしています。
遺伝カウンセラーとは何をする人で、
今後の医療や社会にどう貢献していくことができるのか?
そんな内容が示される会になるといいなと思います。
と、他人事すぎるのもどうかと思い、
「遺伝カウンセラーって何?」を振り返るべく、
下記の、遺伝カウンセラー制度が開始した時の資料を見てみました。
自分の役割や目標を再確認できたの同時に、
もっとこの内容を広く社会に知ってもらいたいと改めて思いましたね。
やっぱりこの仕事が好きだから。
http://plaza.umin.ac.jp/~GC/About.html
認定遺伝カウンセラーとは
1)認定遺伝カウンセラー®は遺伝医療を必要としている患者や家族に適切な遺伝情報や社会の支援体勢等を含むさまざまな情報提供を行い、心理的、社会的サポ-トを通して当事者の自律的な意思決定を支援する保健医療・専門職である。
2)認定遺伝カウンセラー®は医療技術を提供したり、研究を行う立場とは一線を画し、独立した立場から患者を援助することが求められる。
3)認定遺伝カウンセラー®は、遺伝カウンセリングについて一定の実地修練を積んだ後に資格認定される専門職で、下記の要件を満たす必要がある。
・最新の遺伝医学の知識を持つ
・専門的なカウンセリング技術を身につけている
・倫理的・法的・社会的課題(Ethical-legal-social issues: ELSI)に対応できる
・主治医や他の診療部門との協力関係(チーム)を構成・維持できる
4)認定遺伝カウンセラーとなりうる基盤の職種としては看護師、保健師、助産師などのメディカルスタッフや、臨床心理士、社会福祉士、薬剤師、 栄養士、臨床検査技師などのコメディカル・スタッフ、また生物学・生化学などの遺伝医学研究者やその他の人文・社会福祉系などの専門職が考えられる。
(厚生労働科研報告書:認定遺伝カウンセラー制度研究の歩みより作成)
認定遺伝カウンセラーの養成カリキュラム
認定遺伝カウンセラー®の養成にあたる基本的な目標は下記のとおりである。到達目標については、それぞれの目標レベルに応じた履修科目をリストアップし、その履修目標をまとめている。
(1)一般目標(GIO)
遺伝医療の現場において臨床遺伝専門医や他の医療スタッフと協力して相談に訪れたクライエント(来訪者)に臨床的で科学的な情報を提供し、クライエントが遺伝子診断、遺伝子治療を含む医療や生殖行動など日常生活の場において自らの意志によりこれらの情報を有効に活用して自分や家族のQOLを向上できるように援助するために必要な臨床遺伝学、カウンセリングに関する基本的な知識、技術、態度を学ぶ。
(2)到達目標(SBO)
1)知識レベル:
人類遺伝学の基本知識、代表的な疾患の臨床像、自然歴、診断法、治療法に関する基本的知識を持ち、発生予防、医学的管理、社会的資源の活用法などを知っている。遺伝子診断の基礎を理解し、発見された遺伝子異常についてクライエントへの情報提供やカウンセリングをおこなうための基本的知識を修得している。認定遺伝カウンセラー®として活動するためにわが国の医療・福祉システムや制度、倫理および法的背景について必要な知識を修得している。
2)技術レベル:
遺伝医療のニーズにあった家系情報を収集し、家系図にまとめることができる。クライエントが持つ問題の遺伝学的リスクを正しく推定できる。クライエントと好ましい人間関係をつくるためのコミュニケーション技術を持っている。クライエントに共感的理解と受容的態度を示しながら非指示的カウンセリングを行うことができる。クライエントの心理的課題に認定遺伝カウンセラー®の立場から介入でき、家族等周囲との人間関係を調整し、患者や家族のQOLを向上させるための指導技術を持っている。遺伝医学の最新情報、専門医療情報、社会資源情報、患者の支援団体情報を収集し、その情報をクライエント自身が活用できる形で提供したり、臨床遺伝専門医との連絡、専門医療機関や地域行政機関と連絡調整をおこない、クライエントが最良の遺伝医療を受けることができるよう調整する技術を持っている。専門職として常に最新の遺伝医学情報にアクセスしたり、臨床遺伝専門医とのミーティング、研修会への出席、学会活動など自己学習の手段を修得している。
3)態度レベル:
認定遺伝カウンセラー®は遺伝医療を支える医療スタッフの一員であると同時に、医療技術を提供する主治医の立場からではなく、クライエントの側に立って最良の選択を行えるよう援助することが求められていることを自覚し、臨床遺伝専門医、主治医、他の医療・福祉スタッフとの間で好ましい人間関係を作り出すための調整技術と態度を身につけている。また、医療スタッフの一員として、ジュネーブ宣言とヘルシンキ宣言の主旨を遵守したうえ、クライエントの利益に深い配慮をはらいながら活動する態度を身につけている。クライエントに対してはカウンセリング・マインドを基本とし、社会通念や倫理規範にも十分に配慮しながら科学的なカウンセリングを行う態度を修得している。
この貴重な文章を活かすために、
まず、
認定遺伝カウンセラー協会の「認定遺伝カウンセラーとは?」のページにも書いてほしいなと思います。
(このページ)
まず、認定遺伝カウンセラー®とは 1.) 2.) 3.) 4.) を記載して、
その下に具体的にできることとして、
認定遺伝カウンセラーの養成カリキュラムの内容を記載するのはどうでしょうか。
この文章、認定遺伝カウンセラー協会のwebサイトにしかなく、
遺伝カウンセラー制度委員会のwebサイトでしか、しかも、小さな▽ボタンを押さないと出てこないんです。
もったいない・・・。
って、ここで書かずに直接協会にお伝えしなさいって話ですよね。すみません。
あと、今の医療現場の具体的な場面に落とし込んだ例があると良いと思います。
あの緻密な文章を、遺伝カウンセラー以外の人に全部呼んでもらうことは難しいでしょう。
目指す像は分かるのですが、具体的にいつ、どこで、何をしてくれる人なのかは想像しにくいです。
遺伝カウンセラーが自分に何をしてくれる人なのか?
→遺伝カウンセラーに直接会えるまで楽しみにしていてください♪
という状態では、患者さんにとっても、遺伝カウンセラーを雇おうか検討している病院にとっても困りますよね。
私も実際、もしこの内容を入職前に上司(遺伝カウンセリングを見たことがないドクター)に知ってもらえてたら、もっとスムーズに色々なことが運んだだろうなと思ったりします。
遺伝カウンセラーを知らない人にどう伝えるか?
遺伝カウンセラー協会10周年イベントをきっかけに私自身も考えていきたいと思います。
日々、ボランティアで協会の運営を担ってくださっている遺伝カウンセラーの皆様への感謝もこめつつ。
今日も呼んでいただきありがとうございました。
井令 咲絵(いれさき)
文章を書く筋トレだと思って
最近、毎日1投稿できたらいいなと思って
1週間取り組んでみました。
試して分かったことは、
何と自分の「考えを文章にまとめる」力が無いことか・・・。
「今日はこういう内容を書きたいな」と思ってから、
投稿ボタンを押すまで2時間くらいかかっています。
くううう。
この調子じゃ途中で挫折してしまう・・・まずい。
私は、自分が遺伝カウンセラーになるまで、
そして今こうして働く中で、
「こういうことを教えてくれる人がいたらよかった」という記事を
発信したいんだ!
ちなみに私が具体的に何を発信したいと思っているかは
こちらの所信表明をご覧ください。
でも、突然に文章力があがる訳では無いし、
日々こつこつ練習するしかない。
100キロのダンベルを上げたいのに、
今はまだ棒しかあげられない、という感じです。
それでいきなり50キロのダンベルをあげようとしたら怪我しちゃいますよね。
でも棒だけ上げ続けるのも地味で辛い。
「もっと役に立つ情報を発信したいのに」というもどかしさ、
「時間をかけてもこんな些細なことしか書けないなんて」という悔しさを感じます。
でも理想に向かって、文章を書く筋トレだと思って、
投稿を上げ続けていこうと思います。
今の目標は200記事まで続けること。
ちなみに今回で25記事めです。
その頃には少しは「考えを文章にまとめる力」はアップしているかな。
これが遺伝カウンセリングのコミュニケーションにも役立ってくれると良いな。
みなさんは何か取り組みたい習慣、こうなりたい目標はありますか?
一緒に頑張りましょう。
井令 咲絵(いれさき)
遺伝性乳がん卵巣がん診療の保険適応について Part3
前回の記事で紹介しました、
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の診療の保険償還の件の続報です。
今日の中医協の資料で、それぞれの診療報酬点数が示されましたのでメモします。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000593368.pdf
(新設)BRCA1/2遺伝子検査 2 血液を検体とするもの
20,200点
(新設)【がん患者指導管理料】ニ
医師が遺伝子検査の必要性等について文書により説明を行った場合
300点
(この二って、2じゃなくて、イロハの二だったんだ・・・)
(新設)遺伝性腫瘍カウンセリング
1,000点
遺伝カウンセリング
1,000点
リスク低減乳房切除術
結局いくらになるのでしょう?
再建も行う場合は「K475 乳房切除術」+「組織拡張器による再建手術(乳房)」の点数になるでしょうか。
これは要確認。
リスク低減両側卵巣卵管切除術
これは「K888 子宮附属器腫瘍摘出術(両側」の点数?
これも要確認。
乳房MRI検査
何テスラのMRIで撮影するかによって変わるんですね。施設によって異なると思います。
1.5テスラのMRIだとすると、
「E202 磁気共鳴コンピューター断層撮影(MRI撮影) 1.5テスラ以上3テスラ未満」+「乳房MRI撮影加算」?
これも要確認。
ひとこと
乳がんの遺伝を心配している患者さんにとって最もインパクトのある情報は、
「BRCA遺伝子検査はいくらか」だと思います。
3割負担の場合、約6万円ですね。
決して安い金額ではないですが、
これまで20万円程度かかっていた検査ですので、
ぐっと安くなった印象はあります。
あと、個人的には
【がん患者指導管理料】ニ
医師が遺伝子検査の必要性等について文書により説明を行った場合
300点
について、
他のがん患者指導管理料には、「看護師と共同で」や「薬剤師」といったコメディカルの併記があるのに、「遺伝子検査の必要性の説明」はだけなぜ医師だけなんだろう?
とふと気になりました。
“医師の説明の場に遺伝カウンセラーがいてもいいよ”、という余地を残してくれているのかなと(勝手に)肯定的に受け止めておこうと思います。
今日も読んでいただきありがとうございました。
井令 咲絵(いれさき)
遺伝子解析の二次的所見について勉強中
昨日の記事でがんゲノムプロファイリング検査の二次的所見について触れたのをきっかけに、
過去に受けたこのテーマに関するセミナーを復習したいと思い、
下記の回のテキストを引っ張り出してきました。
第11回 遺伝カウンセリングアドバンストセミナー
臨床遺伝専門職のためのがんゲノムセミナー「がんゲノム医療時代における遺伝医療」
2019年7月14日(日)~15日(月・祝)@岡山
このセミナーでの講義の1つ、
「がんゲノム医療における遺伝カウンセリング」の資料を読み返していました。
ポイントがたくさん詰まっていて、全部ここでシェアしたいくらいです。
が、私のキャパシティの限界のため、
講義で紹介されていた関連情報サイトの一部をメモしたいと思います。
・ACMG(アメリカ臨床遺伝学会)の提言
臨床現場で行われる網羅的遺伝子解析で見つかる二次的所見の開示に関する提言は、
遺伝カウンセラーであれば皆さん知っていると思います。
ただ、アップデートもたびたびされますので、最新をチェックするならここをブックマーク!
・Clin GenのActionability Reports
actionability.clinicalgenome.org
バリアントの解釈の標準化を目指すClin Gen。
そこではActionabilityの評価もコンセンサスをつくっていく作業が行われています。
開示対象とすべきか?の判断の参考になりそうです。
(使い方)
- 「Search」に遺伝子名を入力。
- Statusが【Released】(緑)であれば、
- 右端の中段の【レポート用紙のようなアイコン】をクリック
- Summary Reportが表示される。疾患の概要と、最下段の”Final Consensus Scores”にActionabilityの点数が記載されている。点数は12点満点だそうで、ルールは表の下のリンクをクリックすると確認できます。
・ESHG(ヨーロッパ人類遺伝学会)患者さん向けの二次的所見に関する意思決定支援ツール「GENOMICS ADvISER」
意思決定を4つのステップに分けて、10分くらいの動画を見たり、質問に答えたりしながら進んでいく形式です。
私は途中まで進んで、あとで最初からゆっくりやろうと思ったら、そこからしかスタートできなくなってしまいました。
1時間くらい時間をとれる時に、最初からじっくり試してみるのが良いかもしれません。
以上です。
こういう情報を教えてもらえるセミナーはほんとにありがたいです。
つい知って満足してしまいがちですが、実際使わないと意味がないですね。使わないと忘れてしまいますし。
このブログで記録を残したり、「こうやって使った」というレポートもできたらいいなと思います。
今日も読んでいただきありがとうございました。
井令 咲絵(いれさき)
がんゲノム検査の二次的所見の指針改訂版について
今日は先週公開された、
「がん遺伝子パネル検査二次的所見患者開示ミニマムリスト暫定案 ver.2」と、
「ゲノム医療における情報伝達プロセスに関する提言―その1:がん遺伝子パネル検査を中心に(改訂版)」
の2つの資料について、
印象に残った点を書きます。
患者さんへの開示ミニマムリストver.2
https://www.amed.go.jp/content/000045428.pdf
前回よりさらに具体的で明解な内容になっています。
1、前回のミニマムリストの遺伝子が「最も強く開示を推奨」に位置づけられ、
さらに、がんゲノムプロファイリング検査に含まれる他の遺伝性疾患の遺伝子すべてについても、
新たに3段階で評価が付けられています。
2、腫瘍組織のみのゲノムプロファイリング検査で二次的所見疑いの変異が検出された際に、
確定検査が必要かどうかについても、新しく3段階で推奨度が示されています。
これだけ多くの遺伝子について、「患者さんへの開示の推奨度」を吟味し、コンセンサスを形成するプロセスは相当大変な作業だったと拝察します。脱帽です。
私のような、
「この遺伝子の病的変異だったら、総合的に考えて開示しなくてもいいだろう。あのセミナーでも勉強したしね。でもでも、こう考えるのは自分だけかもしれない。もごもご・・・。」
という感じ弱気な遺伝カウンセラーの背中を押してくれる資料です。
ということはおいといて、
まじめに、
患者さんがどのがんゲノム医療病院でも、二次的所見の開示や確定検査について、
統一した対応を受けられるようになるわけですから画期的なことです。
あとはどの遺伝性腫瘍でも、地域ごとの拠点病院であれば一定の診療が受けられるように、
私たち遺伝の専門職は努力していかなければと思います。
がんゲノム検査の情報伝達プロセスの提言 改訂版
https://www.amed.go.jp/content/000045427.pdf
1、二次的所見疑いの遺伝子変異について、確定検査を行うかどうかの判断のフローチャートが新たに示されました。
特に、バリアントアレル頻度の目安の数字があるのがありがたいです。
続いてlipuid Biopsyのバージョンも・・・お願いしたいです。
腫瘍組織のみのゲノムプロファイリング検査と同様に考えてよいか、はたまた、lipuidの場合に注意すべき点は何か、
勉強せねば。_φ( ̄ー ̄ )
2、初版に引き続いて「二次的所見の遺伝カウンセリングは自費診療のため費用負担が小さくなるように工夫が必要」という旨の記載がありましたが、
先日の中医協の診療報酬改定の資料によると、保険適応になるようです。
もう問題解決されている。すごいです。
ちなみに「遺伝カウンセリング加算」ではなく、
「遺伝性腫瘍カウンセリング加算」という新設の項目で、
何点になるかはこれから決まります。
施設要件は、がんゲノム中核拠点・中核・連携病院であれば算定可、のようです。
ひとこと
このありがたい資料を携えて、日々のエキスパートパネル、患者さんへの遺伝カウンセリングに臨みたいと思います。
そう思うと、この資料はその出発点にすぎないということに気づかされます。
遺伝カウンセラーの仕事は、患者さんご家族の目線をもって準備し、その場に臨むこと。
この分野が進んでいる諸外国での、そのような目線の論文もチェックしたり、自分が経験したことを学会で共有したり、
いち遺伝カウンセラーとしてできることをしていきたいと思いました。
ただの感想文でしたが、
今日も読んでいただきありがとうございました。
井令 咲絵