遺伝性乳がん卵巣がん診療の保険適応について_Part 1
先週金曜についに「決定」となりましたね。
保険収載に向けて尽力されてこられた方々に、尊敬の念を感じずにはいられません。
実際に、患者さんからも
「ニュースで見ましたよ!自分に関係することが進展していて嬉しいです」という声を聞きます。
私も嬉しい限りです。
中医協での審議用資料を確認したところ、
対象
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(以下HBOC)が疑われる、乳がん患者または卵巣がん患者
適応となる診療
- BRCA1/BRCA2遺伝学的検査
- “診断の過程を通じた”遺伝カウンセリング
- 発症している乳がん・卵巣がんの治療
- HBOC診断後の乳がん患者の予防的対側乳房切除・予防的卵巣卵管切除、卵巣がん患者の両側乳房切除
- HBOC診断後の乳がん・卵巣がん患者で、予防的切除を希望しなかった場合のフォローアップ検査
と書かれているかと思います。
参照:中央社会保険医療協議会 総会(第441回) 議事次第
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000576445.pdf
ここで特に私が気になるのは、
2. “診断の過程を通じた”遺伝カウンセリング
とは、BRCA1/2遺伝子検査の前の遺伝カウンセリングも当てはまるの?
ということです。
実際の診療では、検査前の遺伝カウンセリングが最も多くなります。
これは遺伝子検査を受ける前の重要なステップと各種ガイドラインで位置付けられているにも関わらず自由診療扱いです。
するとやはり患者さんの中には、
「自由診療なら結構です」という方がそれなりの割合で出てきてしまいます。
私としては非常に残念なことです。
ここで遺伝カウンセリングが保険適応になる要件を確認しますと、
- 遺伝カウンセリング加算届出施設で行われている
- 保険収載された遺伝学的検査に伴う、検査前と検査後の遺伝カウンセリング
という内容と思います。
参照:平成30年度 診療報酬点数 D026 検体検査判断料 通知8の(ア)(イ)https://clinicalsup.jp/contentlist/shinryo/ika_2_3_1_2/d026.html
よって、もし今回の件でHBOC疑いのBRCA遺伝子検査が保険適応になるなら、
検査前の遺伝カウンセリングも適応なるはず、と個人的には予想しています。
そうなれば、HBOC診療がより多くの人に届くと思います。
他に気になる点としては、
4. HBOC診断後の乳がん患者の予防的対側乳房切除・予防的卵巣卵管切除、卵巣がん患者の両側乳房切除
について、
過去に乳房温存術を受けた乳がん患者さんで、HBOCの診断をきっかけに、対側だけでなく温存した乳房も切除したいという場合は、“卵巣がん患者でなくても”両側乳房切除術を保険で受けられるのでしょうか?
あとは施設認定の制限がどこまで厳しく設定されるか?ですね。
可能性のある施設基準は、
- 厚生労働省が認定する、がんゲノム医療の中核拠点病院または拠点病院、連携病院のいずれかである
- 遺伝性乳癌卵巣癌症候群診療制度機構(JOHBOC)が認定する、HBOC診療の基幹施設または、連携施設、協力施設のいずれかである
- 遺伝カウンセリング加算届出施設である
かと思います。
私の勤務先は、そもそも3が取れていない施設もありますので、
本腰を入れて準備しなくてはと焦っています。(^^;)
それではまた、この件で新しく気づいたことなどあれば、
Part2として書きたいと思います。
井令 咲絵(いれさき)